
先日、会社の人事担当者と会話したところ、
「5年ほど前に働く女性エグゼクティブとしてあなたが在宅勤務を始めた時は完全に亜流だったのに、今では驚くべきことに最先端ですね。他の人にも自由な働き方が浸透してとてもよい状態ですね」
と言われました。
そう。ようやく時代が私についてきたと感じます、というと自信たっぷりに聞こえるかもしれませんが、自分でも手探りで周囲と戦いながらの苦悩の時代でした。あらためて振り返ってみると確かに働き方をめぐる根本的な考え方が劇的に変わった一時代だったといえます。
たった6年前のことなのにまるで古めかしい時代のことに思えてしまいますが、毎朝定時に会社を目指し、ヤキモキ、イライラしながらタクシーを捕まえて子どもを保育園に連れて行き、遅刻しようものなら白い目で見られて、夕方も誰よりも早く帰宅しなけばいけない日々…。
今では、テクノロジーのお陰で物理的な居場所に縛られないフリーデスク制度が取り入れられ、どこにいようと簡単にチャットやオンライン会議が可能になりました。さらにこれが進み、別にオフィスの中にいる必要もなくなってきて、今ではオフィススペースの有効活用を会社の方が推奨するまでに変わってきました。
年子の乳幼児二人を抱えて四苦八苦していたあの頃、毎日会社に来ないといけなかったというのは本当にキツかったなーと思います。
「上司が席にいないと仕事が進まない」とか、「いないときはちゃんと予定を教えてほしい」から始まり、「朝や夕方にきちんとみんなに挨拶をすべきだ」など、職場の360度評価で酷いコメントがついたこともありました。私を捕まえたければいつでもスマホに電話してこればいいのに、と当時は思っていましたが、時代を先取りしすぎていたのかもしれません。今ではそんなことは当たり前になりましたが。
当時は周りとのギャップに嫌気がさしてかなり心破れたこともありましたが、いつしか不満をかかえる人たちもいなくなり、この5年間に多くの人たちに在宅勤務のチャンスが巡ってきて本当に良かったと思います。もはやワーキングマザーのみならず、一般の独身男女の社員も週に一日、二日は在宅で働くことが奨励されるまでになったので、時代の流れってすごいなーと思います。
ところが在宅勤務というのは実際にやってみると、案外キツイものなのです。ただオフィスにいさえすれば仕事をしているとみなされるのとは違って、周りに見える形で貢献を残さないと居場所がなくなるという点が一つ。そして、家から働くというのは一見聞こえがよくて便利なようでも、実際にやってみるとポツンと家の中で世の中から取り残され、周りとコミュニケーションを取るのも難しいと感じるといつ難しさがもう一つ。
そんな訳で、 最初は在宅をしたがっていても、やってみると会社に来た方が仕事をしやすいという人も多く、在宅勤務に耐えれる人とそうでない人に別れてきます。でも、人間、選択肢を与えられると穏やかになるようで、今では誰も私の働き方を咎めることはなくなりました。
そして何よりもおどろいたのが、この夏に会社で一斉に行われた外部調査機関による社員の意識調査によると、私の部門が会社の中で最高点、グローバル組織の中でも最高レベルに達していたことでした。
会社の平均が60ポイントをウロウロしているところを、なんと回答率100%、満足度79という(驚異的なレベルだそうです)を達成していました。これをどう分析するか迷ったので、冒頭の人事担当者に分析を依頼したところ、上のような回答があったのでした。
もし、私自身が在宅勤務未経験であれば、部門全体にこれほど早く在宅勤務を奨励しきれなかったかもしれません。実際には、制度だけ生きていて働き方の改革が全く進んでいない部署もあり、大体は時間的、物理的な制約が少ない男性のリーダーが夜遅くまで仕事をしています。
自分が何時になっても会社に残れる場合、部下もそばにいた方が便利なのですが、リーダー自らが会社にいなければ、リモートで連絡を取れさえすれば部下がどこで仕事をしていようが関係ありません。上の現象は、リーダー(私)がワーママだったことが幸いして、それぞれの生活バランスな応じたスマートワークが一気に進んで、チームの満足度が爆発的にに改善したのだと思います。
また、5年前と明らかに違うのはテクノロジーの変化で、一昔前までは退社すると仕事をしているのかしていないのかなんて分からなかったのが、今は誰がログインしているのか瞬時に分かり、退席時間も全員に表示される仕組みになりました。
私はもう何年も前から、夕方はさっさと退散し、その後深夜にログインすることがと多いのですが、今頃になって「すごい時間に働くんですね」、「夜中に電話会議とかあるんですね」といってくる人が増えました。結果的に、私にとっては「あの人はオフィスにいる時間は短いけれど、いろんな時間帯に結構ハードに働いているらしい」と認定されるようになったようです。
ただ、個人的には部下や同僚に働き方を評価してもらう必要は全く感じていなくて、あくまで生産性の高い仕事をして、自分のクライアントと呼べる人たち(ここが大切で周囲の人「全員」を納得させることは難しと思います)に良い仕事を届けることが最優先。
まぁ、でも、世の中の動きとして、会社に行くことの意味を考えるようになっただけでも素晴らしい前進といえます。働くお母さんを取り巻くオフィス環境は劇的によくなっているので、もし今、心が折れそうなワーママさんたちがいたら、もう少し辛抱強く耐えたら明日の職場は変わるかもしれないと、お伝えしたいです。時代は私たちに味方してくれていますよ。