先日、D&Iの取り組みについて少し書きましたが、少数派グループごとの共通の対処法のようなものがなかなか見出せないところが難しく、またそれが活動の本質だという気がしています。
育児休暇からの復職後にどれくらいバリバリと働きたいかということについても、実は個人の意向が別れるところです。本人が望まないのに、上司の一存で良かれと思って仕事を減らしたり、メインストリームから外すことで、トラブルになったり、離職してしまうケースを最近耳にしました。
以前、会社に乳幼児を二人抱えて働く女性がいたのですが、宿泊を伴う遠方での仕事は彼女にはできないだろうという理由で、男性上司が本人に相談することなくアサインメントを変えてしまったことがありました。仕事を外された本人は激怒し、マネージメントに訴えてきたので、これが明るみにでたのでした。
育児休暇復職後でも、自分は出張もする気でいるのに勝手に仕事を外され、キャリアの機会を奪われた。
これが彼女の言い分です。
人によって、キャリアの捉え方、子育てへの向き合い方は違うので、一方的な思いやりや思い込みはお節介となるばかりか、迷惑がられることすらあるということです。
ちなみに、この春から職場復帰された方も多いと思いますが、誰しも上の職員のように頑張る必要はありません。自分にとってベストだと思えるバランスを見つけて、大変な一時期をしのぐこと、それを助けるのがD&Iの精神です。
自分のことを振り返ってみると、大変な時の仕事は、むしろこちらからお願いして仕事を外してもらっていました。なので、上のように頑張る人を見ると、自分とは違う価値観の人だなと感じます。人はそれぞれに違ったものの見方や考え方をするものです。
私の場合、自分自身が育児休暇を終えて復職後は、あまりの大変さにCFOタイトルを速やかに返上してしまったという経緯があります。最初の頃は海外の関係会社から穴埋め要員がきてくれて、その人が帰った後は日本人男性が社外からCOO採用されました。
当時、本当なら私がしなければいけないような国内外の出張や会議出席をほとんどその人が全部やってくれて、その間(5年間ほど)は私はひたすら水面下で自分のできる範囲の仕事を一部在宅に切り替えて動いていました。側から見れば、派手な動きの一切ない地味な役回りでしたが、そんな役目をこなすことだけでも私には目一杯で、特に出張を免除してもらえたのは限りなくありがたいことでした。
でも、その間にプライベートで成し得たことは余りに大きいので、今振り返っても何の後悔もなく、むしろ最高のワークアンドライフバランスを頂いたと思っています。
二人の子どもを幼稚園に通わせ、日々のお弁当からお迎え、全ての園行事に至るまで、心置きなく付き合えたからです。専業ママたちに比べると関与度合いは見劣りしますが、それでも3歳から5歳という大切な未就学の時期に母子で濃厚な一時期を過ごし、小学校の準備に全力投球するという貴重な経験もできたのです。文句一つありません。
仕事の手は緩めつつ、でも完全に撤退はせずに細々と繋げることができたことが、キャリアを維持して行く上で、とても大きいと感じます。一方、子育てについても、幼児期にきちんと母親としての学びを得て、我が子にしつけや規律、学習習慣をつけたり、チャレンジ精神の芽を育んでおくと、これが生涯の宝となり、小学校に入ってからもとてもスムーズです。
誤解を恐れずにいうと、私はつい最近まで、仕事はほどほどに、何よりも子育てを最優先にしてきました。重要だと思えるプロジェクトだけ厳選して、普段の3ぶんの1くらいの時間しかオフィスにはいないこともありました。
でも、なぜそんなことが許されたのかというと、この5年ほどの間に驚くほどテクノロジーが進んだからです。在宅勤務環境もすっかり整い、今では会社を上げて全職員が在宅勤務を奨励するまで、働く環境が進化してきました。会社は他の人と協働する場であって、黙々とパソコンに向かう仕事は家でできるようになった今、何のために通勤時間をかけて職場に行くのかを考えるようになりました。
ワーキングマザーといっても、もはやあまりハンデを感じない今日この頃。
そして今になって、仕事はいくらでも待てるけれど、子育ては旬を過ぎると戻れない、子育てにきちんと向き合って正解だった!ということに気がつきます。
子育てに必要な時期はスローダウンし、いずれ時期がきたらキャリアを活かしてしっかり働くという、中長期的目線で仕事とはお付き合い願いたいものです。
こんなスタンスを無責任と呼ぶのは容易いですが、常に全力疾走できる人間はそう多くなく、仮に育児や介護がなくても、バーンアウトして離職する人は多いものです。個々に最適なバランスを見つけて、自分のペースで働けてることで、安定的にパフォーマンスが出せることは組織にとってもプラスなのです。
そういえば、タイトルは返上したものの、実質的には仕事の中身が変わったわけではなかったので、気がつくとまた元の職責に戻っていました。COOはミスマッチだったということで結局は一年ほど前に会社を辞め、風通しが良くなった今、私にも活躍の場と、そのための時間が手に入るようになりました。
また、仕事を続けていたからこそ、ヘッドハンティングの話もたくさんきます(今の所、お世話になった会社を動く気はないのですが)。
ちなみに、上の頑張る女性は、その後、バリバリ働ける環境に転職し、朝は7時に子ども二人を保育所に預け(恵まれた職場内託児所のようです)、夕方7時にお迎え、その後帰宅して食事、お風呂、寝かしつけという生活パターンなのだそうです。本人は水を得た魚のように生き生きとしているので、その方にとってはそれが今のベストバランスなのでしょう。
