海外での起業体験について書いてみようと思います。同じことをしようとしている人は多くないかもしれませんが、自分自身がアウェイの地で事業を起こすという体験を通じて、逆の立場の人のことを深く理解できるようになりました。
今回は、イギリスでの起業を通して感じた「挑戦して良かったこと」と「大変だったこと」を共有したいと思います。(なぜイギリスで?イギリスの事業とは?については別の機会でお話しします。)
挑戦して良かったこと
1. 現地の起業家ネットワークの構築
まず、イギリスの事業を通して、現地での起業家やスタートアップに関わる方々とつながる機会に恵まれました。オックスフォード大学のスタートアップ・インキュベーターに参加したことで、最先端のビジネスアイデアや知的財産権のノウハウにも触れることができ、自分の視野が大きく広がりました。また、在英日本大使館やジェトロともつながり、現地での日本人起業家支援にも助けられました。
特に印象深かったのは、2023年4月にスタートアップ担当大臣が訪英した際のディナーに招待され、イギリスのスタートアップ事情について意見交換をさせていただいたことです。私以外のスタートアップはすでにIPOを控える大手の未上場会社の社長さんたちでした。このような経験は、日本にいるだけでは得難いことだったので、世界が一気に広がったと感じました。
2. ヨーロッパでの多様性との出会い
イギリスに拠点を置くことで、ドイツ、フランス、フィンランドなどヨーロッパ各国を旅行する機会に恵まれました。複数の国が隣接しているヨーロッパでは、文化や価値観の多様性を肌で感じることができます。
さらに、日本とは異なる視点も得られました。例えば、日本では人口減少がネガティブに語られることが多いですが、ヨーロッパでは人口一千万人程度の国も数多く存在し、それでも国力がしっかりしている国がたくさんあります。この経験を通じて、日本に対する新しい視点や希望を持てるようになったのは、大きな財産です。複眼的に物事を見ることは大切です。
3. 日本での新たなつながりの形成
日本に帰国後、在日英国商工会議所とのつながりができたことも大きな成果の一つです。このつながりを通じて、大阪万博に来日する英国派遣団のお手伝いができる可能性があり、非常に楽しみです。また、日本のスタートアップ界隈でも支援を得られるようになり、ビジネスの新しいチャンスが広がりました。昨年暮れには日本のスタートアップコンテストで入賞することができ、イギリスでの挑戦が、日本での活動にもポジティブな影響を与えています。
大変だったこと
1. 高額な初期費用と為替の影響
一方で大変だったのは、起業家ビザの取得に多額の費用がかかったことでした。最初に渡英したときのスタートアップビザは自力で簡単に取れたのですが、途中でイギリスの移民政策に大きな変更があり、また不法移民問題が社会問題化(一部暴徒化)し、なかなか苦労しました。100時間以上をかけて作ることになった事業プランは最終的に80ページにも上り、弁護士費用や申請費用が想定以上の負担となりました。さらに、ポンド高の影響もあり、予算管理も大変でした。
2. 家族の生活の安定
プライベートでは子どもを連れて留学という形でイギリスに移住しましたが、子どもたちが別々の現地校に通うことになり、生活を安定させるまでが非常に大変でした。特に英語を話せなかった子どもたちは、最初の一年間、言葉の壁で苦労し、学校に通わせるためのモチベーションを維持することや日々のケアが親としての大きな課題でした。子どもたちは2年目以降は逞しく学校生活を送ってくれました。
3. 日本との時差対応
私自身、日本で行っていたアジア圏向けの仕事を継続していたため、時差対応が必要でした。このため、極度の睡眠不足に陥り、健康面で大きな負担を抱えた時期がありました。特に早朝や深夜の打ち合わせが連続する日々は、心身ともに厳しいものがありました。この経験を通して、ウェルビーイングの大切さに目覚めることになったので、結果オーライとなりましたが、自分に貸すものが大きすぎて無理を続けた一時期となりました。
まとめ
イギリスでの起業は、多くの困難と挑戦を伴いましたが、それ以上に得られたものも大きい経験でした。現地での大学の支援や人とのつながり、多様な価値観との出会いは、今後の私の人生や仕事において計り知れない価値があります。
また、この経験を通じて、異文化で挑戦する人々への理解が深まり、日本で外国人労働者や起業家を受け入れる際の視点も得られました。何歳になっても、家族や子育ての事情があっても、できる範囲で挑戦をしてみることで得られることはとても多いと感じます。
イギリスへの留学、そして起業を考えている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。