Former Vice President of the United States – Al Gore

今日はオックスフォードのビジネススクールで開講されている Global Opportunities and Threats: Oxford (GOTO) について紹介します。2021 GOTO Summit では最優秀に選ばれたグループがスペシャルゲスト(アメリカ合衆国元副大統領アルゴ・ゴア氏)の前でプレゼンを行い、激励をもらうという栄光に輝きました。アル・ゴアのスピーチは画面越しにもど迫力で、人を惹きつける魅力たっぷりでした。Zoomコールだと言うことを忘れさせるような目線や言葉の選び方はこれまでのどのスピーカーとも違う異次元のレベルで、踏んだ場数の違いと、環境問題というゴア氏にとっても特別な思い入れのあるトピックが滲み出たものでした。

GOTOは、先に説明したインドにスタディツアーに出かけて勉強するGRGに次ぐグループワークです。毎年学校側が指定する題目に沿って自分達でテーマを選んで行われるのですが、私たちの年は「Climate Change(環境問題)」でした。2022年は「System reset (システムのリセット)」で、コロナ禍でひっくり返った様々な秩序について考えると言うものです。こうしたテーマ選びに共通しているのが、「一筋縄ではいかない難題」であり、因果関係が複雑に絡み合い、ワンソリューションでは解決できない性質のものが対象になります。というのも、GOTOで学ぶべきのは、デザインシンキングという領域で、絡み合った問題を全体的に修復していく方法だからです。

例えば、環境問題では、仮に経済活動を止めて仕舞えば地球の環境破壊のペースは鈍化するかもしれませんが、この提案が非現実的であることに加えて、経済的な発展が阻害されることになり、貧困問題や社会的正義が犠牲になってしまう恐れがあるという意味で、よい解決方法ではなくなります。最近よく聞く持続的な成長(サスティナブル・グロース)を現実のものとするためには、打ち上げ花火のような解決策ではなく、より細かなレベルで難しいバランスをとり続ける方法が有効的なのです。では、ビジネスリーダーとして問題をどのように把握して、誰に働きかけ、何を達成すればよいのでしょうか?

この点、一昔前までは、企業は株主だけを満足させればよいという一枚岩的な視点が資本主義の柱でした、この利益追求型が行き着くところまで行った結果、地球温暖化やサプライチェーンでの人権剥奪(低賃金就労や児童就労の問題)が指摘されるようになり、こうしたやりすぎが大いに反省されて、現在のビジネスの在り方が修正資本主義の方向に向かわざるを得なくなっています。これがビジネスの現場で意味するのは、株主だけを見て旗を振る時代はもう終わり、従業員、消費者、取引先、非営利団体、政府・外郭団体などより多くの相手の意見を取り入れて事業環境全体が底上げされるような活動を行う必要が出てきたということになります。

こうしたシステム理論をビジネススクールが取り入れたのは画期的なことで、従来のファイナンスやアカウンティング、M&Aといったビジネスをスケールして成長させることに比重が置かれがちです。かつてMBAを取った人たちがビジネスを牛耳り、搾取型の利益追求モデルに走ったことが大いに反省され、ビジネススクールが必至になって軌道修正していることの証かと思います。オックスフォード大学のビジネススクールでは全てのカリキュラムを終えた卒業生の誰もが、この複眼的なビジネスの舵取りについて学ぶことになります。卒業後にコンサルタントになる人も官僚として政府に戻っていく人も、社会に与えるインパクトを考えた時、こうした学びの恩恵を広く受けた人材を各分野に放出することの意味は大変大きいことです。