今日は、サイードビジネススクールの看板授業の一つである、Global Rules of the Games (GRG) について書きますね。授業の内容とインドで見聞きしたこと、そして子連れの旅となったことが中心です。

まず、この授業、日本語にすると「ゲームのグローバル・ルール」となり、クラス全員がインドのムンバイに一週間滞在して新興市場でのビジネスについて学ぶのが趣旨です。新興国はルールがないこともあれば、あってもいい加減だったり、すぐに変わったりするし、外国のビジネスがロビーイングして政策に影響を及ぼすことも可能です。このクラスの事前準備としては大量の読み物が指定され、インドの近代史、現政権(Modi政権)の政治的スタンス、グローバル企業がインドでどのような事業を展開してきたかのケーススタディなどが中心でした。

ちなみにこの授業は、全16回あるEMBAのカリキュラムの3回目にあたり、第一の統計、第二回の経済学の宿題を引きずりながら(提出期限に追われながら)、インド旅行への準備(注射を打ったり、ビザをとったり、フライトを段取りするなど)を抱えるという鬼のスケジュールだったため、事前準備はほぼ飛行機の中でやりました。

さて、インドの新興市場について学んだ主な内容は、インド特有の事情というよりま、法制度や文化が先進国の常識から大きく外れているために、欧米でビジネスをするのと同じような感覚でやってはいけないということでした。講義録をみていると、Non-Market Strategyとか、Corporate Diplomacyということばがたくさんでてきて、先進国で確立されたマーケット戦略がほぼ役に立たなかった事例や、人口14億人がどのようなメデイアで情報を得ているのかという事情、CSR(企業の社会的義務)のポジショニングについても学びました。

このスタディツアーは月曜日から金曜日まで午前中は講義や地元のビジネスによるスピーカーシリーズで埋まり、午後は現地の証券取引やグローバル企業の視察に充てられました。やはり座学よりも現地視察の方が楽しくて、学びも多かったなと思います。私はAmazonを選んだのですが(一番人気でした)、さぞかし近代的な倉庫のオペレーションを見れるものと期待していたら、人件費の方が安いということでたくさん人が倉庫で働いているのを見て複雑な心境になりました。

時期は11月後半でしたが日中はまだ汗ばむ気候・・。現地での移動は主に車でした。ムンバイは交通渋滞で知られていて、夕方の早い時間までに移動しないと渋滞で動けなくなることが短い滞在期間に何度もありました。多くの現地企業は朝の時間帯にスピーカーとして話をしに来てくれました。中には英語の訛りが強すぎてほとんど行っていることが理解できないようなスピーカーもいました。インドでは貧困対策として企業に社会還元が義務付けられており、一貫してスピーカーの人たちがテーマに挙げていたのはCSRのことでした。

ただこの背景は複雑です。現地では税率がものすごく低く、政府の役割は限定的で社会保障がほぼ機能していないという事情があり、この辺りは日本や欧米の感覚とは全く違っています。「税金をしっかり払って社会福祉を行き届かせる」という発想がなく、これを企業が肩代わりして貧困対策を行っているということになります。このような背景を踏まえて、グローバル企業がインド市場で事業展開するときに、人口14億人という輝かしいマーケットだけをみて勇み足で進出するのではなく、先駆者の痛い経験をしっかり踏まえて戦略を丹念に練り、現地に相応しい事業展開をしていかないといけないということをあらためて肝に銘じました。

上の写真は、学校が予約してくれた私たちの滞在先、四つ星ホテルです。滞在客は主に外国人で、チェックインのときにはウェルカムドリンクが出され、滞在中にスペシャルギフト、毎日のチョコレートとお茶のサービスなど、至れり尽くせりでした。ちなみにホテル内の食事は安全で、ペットボトルの水はいくらでも持ってきてもらえ、ホテルの朝食ではサラダバーもドリンクも安全に飲食できました。

下の写真は、滞在中に友人たちと出かけた「ダラビ」というアジアでも最大のスラム街です。車で数十分のところにあります。インドに来て心からショッキングだったのは、目の前に広がる貧富の差。あまりにも開きがあり、消化することが難しい現実です。

Dharavi, India

実は、このインドへのスタディツアーには子どもたち(当時小二と小四)を同伴させました。一人で身軽で行きたいところだったのですが、子どもたちが真剣についてきたいと言ってきたので、親子共に一大決心しました。結果、腸チフスから狂犬病まで一人8本づつ予防接種を受けて(一本1ー2万円するのでお財布も痛かった)、なんとかインド入りしたのでした。

ダラビというスラム街へも訪問(友達同士で任意ででかけたもの)にも、授業が終わった後に子どもたちも参加させました。ダラビには革製品を扱うお店が多く、観光客向けにダラビブランドのロゴがあしらわれたものまで売っていたので、皆で買い物などをしながら街を歩きました。

日が暮れるにつれ瞬く間に人が増えてきて、日本で言うと大型の夏祭りのような人混みでした。帰りのタクシーが来る場所に到達せず、このまま仲間とはぐれてしまったら怖いと思えるような瞬間もありました。やはりこれだけの人口を抱えると言うことは大変なことなんだなと、肌で感じました。今後中国は一人っ子政策の影響で人口が減っていきますが、インドは増え続け、アジアの経済成長の起爆剤となることは必須と言われています。

インドにはイギリスの植民地時代という暗い時代もありますが、なんと言っても英語が通じる経済圏だと言うのもこの国の経済成長のポテンシャルに相当プラスになっています。これだけの人数の人が仕事につき、経済力を高めていけたら確かにすごいことになるのでしょう。高齢化と人口減少が進む日本とは真逆の国、インドは大きな問題を抱えながらもすごいポテンシャルとエネルギーを秘めた国だと思いました。

怒涛の一週間の授業を終え、次にインドに行けるのがいつかわからなかったので、タージマハル(ニューデリから車で3時間移動したAgraという街にあります)にも足を伸ばすことに。日本を出発前に、ムンバイとニューデリ(飛行機で移動)のフライトと、HISでの現地ガイドをアレンジし、復路はニューデリから東京に戻る段取りで手配しました。タージマハルに行く前に、サリーを購入して観光に出かけたところ、日本人の男女子どもがサリーを着ているといって行く先々で写真撮影をされる始末でした。

最後に。。上は一週間のインド滞在に向かうスーツケースの中身です。大型スーツケース2つの中8割方は子どもたちのための食事。野菜ジュースまで二週間分入れました。少々やり過ぎた感はありますが、週5日の授業を受けている間に、子どもたちを食事に連れて行く時間がなく、ルームサービスをとって万一下痢でもされるとその後の工程が厳しくなると思い、万全の体制を整えました。ちなみに紙おむつは、タージマハルに向かう道が3車で3時間あると聞いていたため、トイレに行かなくて良いように準備しました。実際にはAgraの街についてから、タージマハルまでの移動が数時間単位だったため、ここでおむつが大活躍しました(かなりの距離を移動してタージマハルまで歩き、途中トイレらしきものがなかったため)。

HIS経由で予約したガイドさんは四つ星ルートで案内してくれたため、結果的にはトイレ休憩は綺麗な場所でした。ただし、聞くところによるとビジネススクールの友達が自力でアグラまで移動した時のトイレは「この世のものとは思えない代物だった」そうなので、ルート設定が大事なようです。

結果的に、一人も下痢するものもなく(下痢は「インドからのフリーギフト」)、私たちにとってはとても得るものが大きい旅となりました。さらにこの直後にグローバルパンデミックで旅行とは縁の遠い生活になってしまったので…行ける時に行っておいてよかったです。