Oxford Radcliffe Camera in reflection

ビジネススクールに通ってMBAを取得することは、スポーツクラブに似ていると言われたりします。誰もが行く必要はないけれど、通えばそれなりに集中的に必要な筋肉をつけたり持久力を養えたり、自分の身体に良い投資となります。2020年明けからコロナ禍や想定外のことにも見舞われながらもなんとか卒業することができ、その時のリズムが崩れないうちに、今度は起業の旅に出ることにしたことは以前に書いた通りです(「心機一転」)。そんなわけで、今では「学業」が「起業」に置き換わり、フルタイムの仕事をしながら新事業を仕込むということをやっています。以前はドキドキ不安だったものも、やってみれば案外できてしまうもので、これも慣れだなぁと感じます。

さて、仕事、家庭、学業という三足の草鞋を履くと決めた時の話を以前に書きましたが、その時に感じた不安や楽しみが、産休という未踏の地に踏み入る心境に似ていたこと、つまりワーキングマザーなら誰しもが通る道に通じていたことをお話しました。だからと言って、ワーママがMBAを取るべきなんて言うつもりは毛頭ありません。ちょっとまとまった記事を上げておき、MBAシリーズとして一個人の経験をご参考までに記載しようと言う試みをおこなっているところです。あくまでこんな選択もあるんだな、と片目で見ておいていただければと思います。

今日書きたいのは、MBAという経験をとおして自分が得た時間とエネルギーを捻出する方法(「配分」ではなくて「捻出」)についてです。多くの仕事と家庭に追われる人にとって、いくつもの責任をバランスよくこなさないといけないというのは避けて通れない道かと思います。そして、そこに「自己実現」や「自分への投資」などを入れるゆとりなんてないよ!と仰る方は多いと思います。実は私も同じでした。自分だけの幸せを追い求めるライフステージは終わったのだから仕方ないと感じて、後は子どもの教育をしっかりやれば人生に悔いはない、などと思っておりました。

でも本当にそうでしょうか?人生100年時代に、子どもの養育に20年やそこらかけた後、さらに40年…50年と先の人生が続くこと・・・想像できますか?子育てが終わる〇〇年後、自分は一体何歳になるのでしだっけ・・😓 先の読めない時代に無我夢中で仕事と家庭の両立に注ぐのはリスクが高すぎないでしょうか?

最近よく耳にする「詰んだ」という感覚は、もしかしたら男女を問わず世の中に広がっているものなのかもしれません。まさにそういう感覚を持ちながら日々を送るというのは辛いものです。詰むとは、希望を持てない状況を指すわけですから…。ワーキングマザーなんていう言葉が死語になりつつある今、子どもを育てながら生活のための共働きがたくさん出てきている今、ワーママ(ワーパパも)が仕事も家庭も頑張りながら、しかもやりたいことを目指せる世の中になってほしいと切に願います。

実は、自分のやりたいと思えることを自由に模索するというのは、自分にとってだけでなく、家族にも友達にも職場の人など周囲の人間関係にとっても大切なことです。誰もがそんなふうに生きたいだろうし、自分が先頭を切って多様な生き方をしてみると、賛同者や支援者が出てくるものです。そして、本当にやりたいことに邁進する、それこそがそこ力を生み出します。「ワーク&ライフバランスをどう取るか」という時間とエネルギーの配分の問題ではなくて、「何がなんでもやるしかない」と思える人生の目的に出会うことこそが大切なんだと思います。

人間の持てる時間は一日24時間。エネルギーにも限りがあるはず…なのですが、心の底からやりたいことや興味のあること、やらなければやらないと感じる何かが出てくると、常識では考えられない力が作用するように思います。そして、特にこの力は、「誰かのために自分がやらなくてはならない」と思えた時に自分の限界を超えるようなパワーを与えてくれるようです。私の場合は、社会起業を思い立ったことによって、それまで自分のための時間なんてゼロだと思っていたはずの生活の中に、あれよあれよという間に前進するための時間とエネルギーが生み出されていきました。また、以前は子ども二人を抱えて起業するなんて、全く想像することもできませんでしたが、今はやってみようと思えるのだから不思議です。

しかし、どうやって子育てと仕事と、しかも留学までこなしたの?と人に聞かれる度に言葉に詰まります。というのは、その方法はね。。というような秘伝のバランス技法はないのです。実際の生活を振り返ると、すざまじい有様で、決して人様にお見せできるような立派な生活ではありませんでした。ある日の光景として・・、授業のリーディングに全く追いつかないのに家事が山のように溜まっている、食事が終わったら今度は子どもが喧嘩する、時間がないのに学校から呼び出しをくらう、集中する時間がない、頭が働かない、眠い、仕事のメールにも追われている、疲れた。。。こんなことの繰り返しです。ストレスの原因は山のようにあり、何度も、何度も、押し潰されそうになりました。人生の修羅場、荒野の旅です。でも、心の奥深くに幸福感はあるのです。だから、「ワーママでもワンオペでも、簡単にこなせちゃいますよ!」といえば嘘になってしまいます。

あえていうと、自分なりに試行錯誤して得た考え方のコツというのはあったりします。それは、すべては自分がコントロールできていると思えると楽になるというものです。自分がコントロールできていると思えることを言い換えると、目の前のストレスをコントロールできる状態に収めると言い換えることができて、これには、目標設定というか期待値の持ち方が大きく影響します。

一言で言うと、全てのことにハードルを下げるということです。ワーママが子連れ留学するという時点で、「留学できるだけでも御の字だ」みたいに思えると、やれどのフォーマルディナーに参加できないとか、リーディングが全てこなせない、という心の負荷を下げることができます。私がよくやったのは、「事前に全てを準備するのは無理だからできてそうな人を頼ろう」作戦です。ビジネススクールというのは幾つもの分野にわたって授業が組まれているので、「統計はアナリストの◯◯」、「マーケティングは△△」とパーソナルなネットワークを築いて頼ることができます。私の場合は、会計学では自分がスター選手になれると思ったので、そこでそれまでの借りを返した次第です。

ちなみに、人を頼る練習と、精神力の鍛錬は実生活でもビジネスでも確実に役に立ちます。持てるリソースや得意分野は皆それぞれに異なるので、自分のことを知り、相手のことを知る。「彼を知り己を知らずんば百戦殆うからず(相手のことを知り、自分のことを知れば、百回戦っても負けることがない)」という、孫子の兵法ですね。

期待値を下げる話に戻ると。子育てについても「なぜ子どもは自分で勉強して、食事を片付けて、寝てくれないんだろう」と思うと辛いものがありますが、「自宅に猿を二匹飼っている」と思えば、ちょっとしたことでも幸せに感じることができます。私は、自分の学業を優先する2年くらいの間は、かなり大幅に生活面全般のことを仕切り直して、できないことは開き直ってやり過ごしました。

完璧主義はストレスの大敵。二足も三足も草鞋を履く(英語的にいうと幾つもの帽子を被る)ことのメリットはとても大きいのでやっているわけですが、あまりにも大変だと途中でエネルギー不足に陥ったり、目的を見失ってしまいがちです。だからこそマルチプロジェクトを同時並行しておこなうという上で、人生の戦略図が必要になってくるのだと思います。次回はこのことについて書いてみます。

良い週末を!