ママはずっとお仕事してきたのに、何でエムビーエーとかいうのが欲しかったの?

今日はMBAとはなんぞやということを考えてみますか。

MBAとは何か

まず、MBAというのは、Master of Business Administration、日本では経営修士号と言われる学位ですね。Business Schoolとか経営大学院と呼ばれる大学院に通い(学士号を取っている必要があり、成績表も願書書類に入れます)、経営に関連するさまざまな分野について学びます。例えば、戦略、マーケティング、会計・ファイナンス、経済学、統計学といった古典的なものから、デジタル、M&A・会社再建、起業などの新しい専門まで、多くの学校は必須科目と選択科目の組み合わせにしています。

社会人になってお給料をもらい、さらに家族などの扶養家族のいる人が、1-2年を勉強のために割くというのはとても大きな決断です。その間の授業料や生活費もそうですが、仕事を辞めることによる逸失利益もあり、多くの人にとってはよほど得るものが大きくないと踏み出せない一歩といえます(MBAにかかるお金の話はまた後日)。中には国や法人から全額スポンサーシップをもらって派遣される人も少なくないので、自腹をきって通う私費留学生にとっては羨ましい限りですが、私費生には卒業後の身の振り方を自由に決めることができるのが醍醐味と言えます。

どんな人がMBAに行くのか

ビジネススクールに通う人たちをざっくり分けると、こんな感じでした。

  • 20代後半から30代で将来の管理職候補生
  • 30代から40代の中間管理職経験者で異業種への転職希望者や事業主
  • 40代以上で既にリーダーポジション経験者や事業主、転職や起業希望者

バックグラウンドもさまざまで、政府関係、教育、戦略コンサル、弁護士、会計士、建築士、航空・自動車関連のエンジニア、製薬、通信、マスメディア、アート、シアター、NGOなどなど。これだけの多様なメンバーと非常に濃密な時間を過ごすことで、それぞれの個人がこれまで生きてきた狭い常識から広い世界への扉が開きます。ミニ国連のような多国籍、他民族なネットワークの中で、いかにオープンに人と交わり、お互いから学び合い、また高め合えるのかという共通の学びの経験がMBAの醍醐味です。

異業種で経験を積んだ多様な人材が難関の審査をくぐり抜けて1ー2年間共に勉強することが特徴になっているという点で、MBAは純粋な学問を扱うアカデミアとは大きく趣向を異にしています。MBAのカリキュラムでは多くのグループワーク、ケーススタディ、ディスカッションを通して、チームで何かをやることの大変さと素晴らしさについて学び、将来のリーダーを生み出し、イノベーションを促進させることが目的とされています。

学校側の意向としては、卒業後の給与水準が跳ね上がるだけでなく、持続的発展(サスティナビリティ)を事業戦略のど真ん中におけるようなグローバルリーダーの教育に力を注いでいます。従来の資本主義が破壊してしまった環境やサプライチェーンの健全さを修復しなければならないという反省のもとに、今のビジネススクールは大きな変換期を迎えています。World Economic Forum やCOPなどに代表されるグローバルの新潮流を体現していけるようなビジネスリーダーの卵が求められ、それに応えようとする学生が集まっていると感じます。

どういう人がどんな目的でMBAに行くのか?

私のクラスは始まった時に75名ほどのクラスメートがいて、半分強が女性、ヨーロッパ、アメリカで6割アジア、アフリカで4割くらいのバランスで、ダイバーシティはとても高いクラスでした。恐らくアメリカの大学だったらここまでの多様性はなかっただろうと思います(特に東欧とアフリカ系)。アメリカだとエスニックは多様でも、7-8割が英語をペラペラ話し、残り2-3割が留学生でマイノリティ感が出るように思います(特に中西部)。オックスフォード大学は、英語の審査基準がとても高い(TOEICで110という大学院審査では最高レベル)で知られているのですが、それでも参加者の発音やイントネーションがバラバラで、最初は話し言葉を理解するのにとても苦労しました。

さて、そんな多様な同窓生をみていると、18ヶ月のカリキュラムが進む中で、最初の9ヶ月間の間に肌感覚だと3割くらいの人たちが仕事を辞めてフルタイムの学生に転向しました。最初はできると思っても、大量の宿題やアセスメントをこなす上で時間は貴重なリソースです。どうせ転職するからいいやということもあって、1年目で離職して、2年目に新しい職に就いた人もいました。

卒業後は入学時とは違う仕事をしている人が半分以上、皆何かしら違う仕事に移ったり、異業種に転職したり、あるいは新たに事業を起こそうとしている人たちが私を含めて6組ほど(人数にすると10数名)いますし、一部の人は家業を継いだり、大学に残って研究職を続ける人もます。業界的には、やはりビジネススクールの性質上、金融とコンサルファームへの転職やステップアップが多い印象です。元々、高額なビジネススクールの授業料を負担できるそうというのがベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ、プロフェッショナルファーム業界に多いのと、卒業後は高いお給料を求めて(学資ローンの返済というような事情もある)こういう業界に転職する人が一定数いるためです。

ただし、一昔前のMBAとちがうのは、大多数が投資銀行など主に金融業界に就職するという流れにはなっていなくて、今はテック系スタートアップでイノベーションを起こすことが可能になったので、それぞれの居場所はバラバラでもデジタルで繋がって何かをやろうという動きはとても盛んに感じます。

クラスメートと食事会や飲み会がある度に、今どうしてるの?この後何するの?と現在と将来の話で持ちきりになりますが、入学当初は多くの人がオープンエンドにしていた(卒業後の姿をしっかりとは決めていない)人が多かったのが、卒業するまでにいろんなことを考え、授業の内容に刺激を受けて新しい仕事に移っていく、そこにはMBAの確かな作用があると感じます。

では、結論。まとまったカネと時間を投下しなければとれなMBAは、果たして投資といえるのか、あるいは浪費なのか、という問題ですね。これは、逃げるわけではありませんが、まさにケースバイケースです。プログラムを途中でやめちゃった人、オンライン授業になってからほとんど参加しなかった人、授業以外の付き合いをほぼシャットアウトした人にとっては、はっきり言ってお金の無駄遣いだったと思います。授業にはでて元は取れたよ、英語は上手くなったよと思う人たちは、対価を得た消費組。一方で、報酬アップという分かりやすい投資効果を得た人、自ら動いて積極的に人と繋がり、学校の内外で自分の人生をピボットした人は、少なからずMBAの前と後では違う人生を歩んでいることになり、広義には投資と言えるのではないでしょうか。

一般人にとってMBAは得難い経験をさせてくれるとても効果的な方法だと思います。私の場合、MBAきっかけでイギリス移住と起業にこぎつけたという人生の節目を迎えることができ、個人的にはとても満足しています。ちなみに成功者の多くはMBAなど時間の無駄だと言っていますね。イーロンマスクは、MBA卒業生が増えたせいで現場主義がなくなったと超絶批判的です。確かに、ビジネススクールでは経営者になる方法は教えてくれません。事業の核となる本質的なことは学校では教えてもらえないので、勘違いすると失敗することになります。このことについてはまたMBA体験記の後の方で触れてみたいと思います。