読者の方からのご質問への回答の続きです。
では一体、教育費というものはいくらかけるのが相応なのかという疑問が湧いてくるように思いますが、その前に、パワキャリ・カップルが陥りがちなダブルインカムの落とし穴、という(自分にとっても)耳の痛いお話をさせて頂きたいと思います。
例えば、夫の年収が1000万円、妻の年収が1000万円だとしましょう。
世帯年収2000万円ということで(都内のパワキャリ・カップルを想定して一般的な標準よりも高めに設定します)、例えば「小学生を持つ世帯の年収の4割が教育費」などという記事をみたりすると、「そうか、うちの場合は年間800万円も教育費が出ていないから大丈夫」という人は危険ですが、「給与天引き後ベースで計算し直すと500万円くらいが上限かな」という考え方も実はちょっと危険です。
なぜなら、まさに質問者の方が懸念されているように、ワーキング・マザーが仕事を維持するためにはアフター幼稚園や学童などの保育料が必要になったり、その他、時間を捻出するために交通費や外食費、外注費などが専業のお母さんのいる家庭よりもかかってしまう傾向にあるからです。
仮に月額30万円の「教育費」がかかるとなると、年額360万円。
仮に上の年収レベルを想定した場合、二人目にも同じ金額はかけられないと思うのは極めてまともな金銭感覚です。
但し、私の知る限りにおいて、東京都内の子育て事情を考慮すると、お子さん一人につき月額30万円の教育費+保育料をかけるというのは共働き家庭にとって珍しいことではありません。
ご質問者の方が特に贅沢をされているというわけではないと思うのですが、全ては入ってくるお金(年収)に対する相対的な判断ということになりますのでもう少し詳しく見てみましょう。
月額30万円の内訳を、保育料、シッター料などとの「両親が共働きするためのコスト(別名、キャリア維持費)と幼稚園や幼児教室にかかるピュアな教育費」に仕分けるとどうでしょうか。
例えば、二人の子供の保育料やシッター料が月20万円だとするとこれが「キャリア維持費」に相当します。
そこに幼稚園や幼児教室、その他習い事や教材などの諸費用が合わせて10万円だとすると、これが「ピュアな教育費」ということになります。
つまり、子供に毎月30万円もかかる!という支出の内訳はキャリア維持費(20万円)と教育費(10万円)だということですね。
そして、キャリア維持費が高すぎるか安すぎるか、という質問とあるいは教育費が高すぎるか安すぎるか、という質問はそれぞれ別々に考えるべきもの、と私は考えているのでそれを説明します。
まず、キャリア維持費については、分かりやすいように妻の収入から差し引いて考えてみることにします。
上の例で言うと、妻の収入1000万円から年間240万円のキャリア維持費を差し引くと、妻の年収が修正後は760万円、世帯年収は1760万円ということになります。この時点で修正後の妻の年収がマイナスになっていなければ、仕事を維持するコストをかけるメリットがあるといえますね。
子供の成長に合わせて保育料の負担は軽減されていくものなので、少なくともプラスであればできるだけキャリアは維持していきたいと思います。
でも単純に世帯年収が二千万円だといって、専業主婦家庭と同じでないことがお分かりいただけると思います。
上で私がお話した「パワキャリ・カップルが陥りやすい罠」というのは合算年収が頭にあると「ついつい贅沢してしまう」というリスクのことです。
(もちろん、稼ぎ手が二人いるということはリスクヘッジという意味合いからすると、とても安定性が高まりますが、ここは保守的に考えるとしましょう)。
上と同様に、税金や社会保険料など給与が天引きされた後の可処分所得も把握しておきましょう。
上の例で、妻の年収から税コストとキャリア維持費を引くと「1000万円-400万円(税金などの天引きが大体3.5から4割)-240万円(キャリア維持費)」、つまり360万円が妻の可処分所得となります。
これを夫の可処分所得600万円と合わせると、世帯全体の可処分所得は960万円。
世帯年収が2000万円!というイメージからは程遠い1000万円未満が上のケースでの世帯の可処分所得になります。
(ちなみに所得税率は所得が200万円以下だと5%ですが、累進的に上がり
700万円だと23%、900万円だと33%。これに地方税や社会保障費などが上乗せされます。詳しく知りたい方は国税著のホームページ へ)。
一方で、上のように支出を仕分けることで、一見すると月額30万円もかかっているように見えた教育費は正味10万円だったということが分かります。
キャリア維持費は、例えば妻が仕事をやめて家に入った瞬間に削減することができますが(または夫が辞めてもいいですが)、教育費は継続して発生します。
そして、この年間120万円という教育費の金額が可処分所得960万円に対して果たして高すぎるのか、耐えられる範囲かを考えてみるといいでしょう。
上の例を可処分所得ベースで考えた時、給料が毎月定額で振り込まれるとすれば、夫婦合算で月額80万円の現金を手にすることができますから、月に10万円の教育費のキャッシュアウトはこのうち12.5%ということになります。
これを8%にまで減らして、残りは将来の学資に回そうという判断もありますし、特にキャッシュに困るほどではないから現状維持で行こうという判断もあろうかと思います。
二人の子供に同様にかけると二倍になりますから、このケースでいくとちょっと多いような気もしますね(ご質問者の方はその他費用が低いと伺っていますので、その分を教育費に回すという判断ももちろんありだと思います)。
むろん、上の「キャリア維持費」についてもコントロールすることが可能でしょう。
例えは、二人目の子供も幼稚園に行くようになれば子供二人に一人のシッターに預けたり、高級保育施設ではなくて学童を利用するなど、工夫次第で組み合わせを変えることは可能かと思います。
また、続きます。